哲学マップ/貫成人/ちくま新書
少し前の本ですが、思想や哲学の本を読む上で絶対に不可欠の本なのでここで紹介させていただきたいと思います。
この本の良いところは、たった200ページほどのボリュームで西洋哲学の全体像を概観できる点です。
私は常々申し上げていることですが、何か新しい分野について学ぶときに大切なのは、網羅性と全体像です。
どんな学問もそうですが、勉強というのは「全体像」をおぼろげなりともつかむことが大切で、哲学や思想も例外ではありません。
プラトンの『国家』やカントの『純粋理性批判』あたりを予備知識がない状態でいきなり読んでも正確に理解できません。
なぜならば、哲学や思想というのは前の時代の思想家を前提にして、建物を立てるように積み上げていくものだからです。
この本(『哲学マップ』)のような総花的な本について、お決まりの批判として、「どうしてその思想家を取り上げないのか」、「記述が浅い」という批判がよくなされますが、完全に見当違いです。
こういった全体像を掴む本というのは、あくまで次に何冊も本を読むことが前提になっています。
まさかこの本だけで西洋哲学のすべてがわかるはずはないのです。
そんなことは筆者の貫先生も当然わかっていらっしゃるでしょう。
また、「なぜあの思想家が入っていないのか?」という反論も予想されますが失当です。
さすがにこのような網羅性が高い本でも、すべての思想家を取り上げるのは不可能です。
そこには確かに筆者の主観あるかもしれませんが、歴史家のカーではありませんけど、どんな物事にも必ず解釈というのは入ります。
解釈が全く入らない「客観的な哲学史」など土台存在しないわけですから、そこはある程度あきらめないといけません。
この本の良いところは、繰り返しますが、やはりそのコンパクトさです。
この本一冊で、「とりあえず」西洋哲学の基本的な事はわかるでしょうし、こういった本を足がかりにすれば、プラトンやカントあたりの原書にもスムーズに移行できるのではないでしょうか。
オススメの一冊です!